Ambition of TABACYA1
ince 21 SEP. 1997
コラム

トルコ人の男

大阪から成田に帰る飛行機の中で、私は一人の男性と出逢った。その日の機内は3人掛けの座席配列で、私の席は通路側で、窓側に女性が一人、真ん中の席に外国人の男性が座っていた。その外国人の男性は私を見て、

「荷物上に上げましょうか。」

「肘掛使ってくださいね。僕はこっちの方を使うので。」

などといろいろ気遣ってくれて、さすが外国人はやさしいなぁと思った。

その人はトルコ人で、実家に帰るところだと言う。そしてポケットからナッツをわしづかみにして私にくれた。

「このナッツはトルコかイタリアでしか売ってないんだ。」

私がおいしいと言うと、さらにもうひとつかみくれた。

私は正直かなりねむたかったのであまりしゃべりたくなかったけど、ナッツもらったし無視するわけにいかなかった。

それからお互い仕事の話になり、彼は伊丹の工場で働いていて、日本人女性と結婚しているという。隣に座っていた女性は彼の奥さんだったのだ。

ここまで聞いて、私はあんまり仲良く話さないほうがいいなと思った。

しかし彼は、

「仕事の話はこれぐらいにして、趣味は何?休みの日は何してるの?」

などと、普通の男女の出会いのトークに入っていった。

私はちょっとやばいんじゃないのー?なんて思いながらもいつの間にかお酒の話になり、今度1ヵ月後に日本に帰ってくるから一緒に飲もうという話になった。

私は「奥さんに聞こえてるよ」と、奥さんの方へすこし手を向けたら彼は何を勘違いしたかその手に握手をしてきた。

「寝てるから大丈夫だよ」

とか言って、ついに電話番号を交換するはめになった。

私は、まあ電話番号くらい教えても大丈夫だろうと思った。彼の名はトオルガイといった。

なかなか面白い名前だな、と思って私は携帯に登録した。

それから約一ヵ月後、トオルガイから着信があったみたいだが、仕事中で全然気づかなかった。

おそらく大量のナッツを買ってきてるだろうなーと、私は思った。

コラム情報
タイトル
トルコ人の男
コラムニスト
アピラ
掲載日
2004/4/26
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